【Smile & tears】について

エッセイ

僕には、ずっと後悔していることがある。
それは今からおよそ14年前の出来事にさかのぼる。

当時、僕は一人の知人から作曲を依頼された。
その人は、以前コラボで僕の曲に歌を入れてくれた歌い手であり、同人系のPCゲームを制作しているクリエイターでもあった。
新作アドベンチャーゲームのエンディング曲を作ってほしい、と依頼してきたのだ。

その人とは良い関係でコラボできていたし、創作への熱意を発信し続ける姿にも信頼と尊敬を抱いていた。
だから僕は迷わず依頼を受けた。

渡されたシナリオを読み込み、物語のイメージを広げながら詞と曲を作り上げた。
仮アレンジまで出来たところで歌い手をどうするかという話になり、SNSで募集をかけた。
応募者から届いたデモ音源を聴き、選考の結果決まったのが、当時ネット上で歌・ボイス・役者として活動していた“彩海ゆう”というシンガーだった。

彼女との制作は驚くほど順調に進み、ゲーム用ショートバージョンではあったが、とても良い歌に仕上がった。
もともと今回限りのコラボのつもりだったが、彼女の声と人柄、そして完成した楽曲から感じた可能性を前に、僕は彼女にユニット結成を提案した。
こうして『Smile & tears』(通称すまてぃあ)が生まれた。

ゲーム曲「空翔ける鳥のように」を皮切りに、これから新しいユニットとして活動していける――
そう思うだけで胸が高鳴っていた。

しかし、『Smile & tears』としてのセカンドエモーション(2曲目)は愚か、「空翔ける鳥のように」のフルバージョンすら世に出ることはなかった。

振り返れば、その原因はすべて僕にあったのだと思う。
頭の中ではいくつもの構想が膨らむのに、言い訳を重ね、なかなか行動に移せない。
これは僕の最も悪い欠点だ。
そして最初の一歩すら踏み出せないまま、『Smile & tears』は活動開始もできずに終わってしまった。

その後僕は音楽から距離を置き、いつの間にか「普通の生活」に慣れてしまっていた。

十数年が過ぎ、人生の変化を経験する中で、再び音楽をつくりたいという思いがよみがえった。
その時、心の奥に沈んでいた後悔もまた浮かび上がった。

「あの歌がまだ完成していない。」

眠らせていた歌詞を引っ張り出し、「空翔ける鳥のように」をフルバージョンで完成させたいと思った。
ユニットとしてリリースする夢は叶わなかったが、AIの力も借り、ようやくフルバージョンが形になった。

今となっては、歌ってくれた彼女とも連絡がつかない。
正直に言えば、これを『Smile & tears』の曲として発表することに、どこか後ろめたさもある。
でも、自分が抱えてきた後悔に区切りをつけるためにあえて言いたい。

これはすまてぃあの「空翔ける鳥のように」です。

そしていつか、どこかで、彼女がこの歌を聴いてくれたなら――
それほど嬉しいことはない。

ちなみにオリジナルのショートバージョンは現在もこちらから聴けます。
http://smileandtears.web.fc2.com/music.html

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