猫を飼い始めたら人生観が変わった話

エッセイ

「猫を迎える前の私」

猫を迎える前の私は、よく言えば仕事も生活もきっちりこなすタイプでした。
言い方を変えれば、時間的な効率を最優先にし、無駄に時間を浪費することを嫌う。人がそうしているのを見るのも気になってしまうほど、心に余裕のない性格でした。

以前から動物は好きでしたが、自分はずっと「犬派」だと思っていました。犬は従順で、喜怒哀楽もわかりやすく、ペットとして理想的だと信じていたのです。
一方で猫は気まぐれで、不愛想で、何を考えているのかわからない――そんな先入観があり、飼うなら絶対犬がいいと思っていました。


「運命の出会い、メイとの初対面」

妻は専らの猫派で、猫を飼っている知り合いに「子猫が生まれたら教えてね」とお願いしていました。
そんな2年前の5月のある日、ママ友から「3匹の子猫が生まれた」という知らせが入りました。妻の猫愛はもう止まりません。そこからは話がとんとん拍子に進み、2カ月後の7月、3匹のうちの1匹が我が家にやって来ました。

もらわれてきたその日、私は初めてその子と対面しました。
生後2カ月、手のひらにすっぽり収まるほど小さくて、まるで電池で動くオモチャのよう。
とても人懐こく、家の中を探検しては匂いを嗅ぎ、慣れてくるとピョンピョン飛び回って遊んでいました。そんな様子を見ているうちに、気づけば目が離せなくなっていました。
元気いっぱいで5月生まれの女の子だったことから、「メイ」と名付けました。


「猫中心の毎日」

暮らしははっきり言って猫中心になりました。
仕事から帰宅すると、玄関で待っている。視界に入ると、つい話しかけてしまう。少し姿が見えないと、どこに行ったのか探してしまう。

財布の紐もだいぶゆるみ、流水型の水飲み器や、置き場所に困るほど大きなキャットホイールもほぼ衝動的に購入。
お気に入りの窓際の居心地をさらに良くするためにDIYで額縁を広げたこともありました。
とにかくメイが喜ぶアイデアが浮かんだら、もういてもたってもいられません。
気づけば「メイの居心地が最優先」という暮らしになっていました。

「家の中のあちこちが、メイ仕様に」

「猫と暮らして変わった価値観」

メイと暮らすようになって、自分の中で大きく変わったのは「物事を決めつけなくなった」ことです。
以前は何かあると、自分の中で「きっとこうだ」と思い込み、別の可能性をあまり考えない癖がありました。

でも、何を考えているのか分からない猫と暮らすうちに、自然と「自分の解釈は間違っているかもしれない」と一旦立ち止まって物事を見直すという視点を持つようになりました。
それは、犬派だった私が猫と暮らしたからこそ得られた感覚だと思います。

そしてもうひとつ、命の尊さを日常的に感じるようになりました。
猫の寿命は人間より短く、長生きしても20年ほど。
いつかは別れの日が来ると想像するだけで胸が詰まりますが、避けられない運命だからこそ、今この瞬間を大事にしようと思うようになりました。


「ありがとう、メイ」

これからもメイには、のんびり穏やかな家猫生活を続けてほしい。
何もなく、安全で、好きな人がそばにいること、きっとそれが猫にとっての幸せだと思います。

そして、もし未来の自分がこの暮らしを振り返るときが来たら、こう言いたいと思います。

「メイちゃん、僕の人生に来てくれてありがとう」

タイトルとURLをコピーしました